マンションは管理を買え!を改めて考える
10月8日の日経新聞に「マンション修繕積立金、引き上げ幅抑制 国交省が指針」という記事が掲載されました。
国交省はマンションの管理組合が作成する「長期修繕計画」について指針(ガイドライン)を作成しています。この指針に強制力はありませんが、多くのマンションがこの指針を参考に長期修繕計画を作成しています。
「長期修繕計画」は一定期間ごとに見直されるべきです。昨今のように急激に物価が上がり、人件費が上がる状況下では、当初想定していた修繕のための予算が不足する可能性が大いにあります。特に人件費については更なる上昇も予想されます。
一方、多くの分譲マンションは新築時に居住を開始した世帯の年齢層が近いことが多く、マンションの老朽化とともに所有者の年齢も上がっていきます。
最近の分譲マンションは価格が高騰しており、取得する年齢も以前に比べるとばらつきが出ているようにも感じますが、10年位前までに分譲されたマンションは多くの場合30~40代で取得された人が多いでしょう。
築30年以上のマンションの所有者の平均年齢は70歳前後となり、すでに年金生活に入っている方が多くなります。
中には、必ずしも十分とは言えない年金で何とかやりくりしている世帯もあり、そのような方にとって修繕積立金の大幅な値上げは生活を直撃します。
とはいえ、70歳前後であればまだ20年くらいそのマンションに住み続けることを想定している場合が多いでしょうから、マンションが健全に管理され、資産価値として維持されることも重要です。
マンションは「一つ屋根の下に住む人たちの共同住宅」です。
居住者それぞれにはそれぞれの生活がありますが、マンションを維持していくためには居住者それぞれが自身の住むマンション全体を健全に維持していこうと考える「共通認識」と「当事者意識」が必要です。
中には空き家が増えてしまっているマンションもあります。
一戸建ての空き家に比べ、マンションの空き家は外部から認識されにくい、という特徴があります。
管理費や修繕積立金は毎月引き落とされているものの、実際にはもう長いこと空き家になっているという物件もあります。そのような物件はいざ、所有者が亡くなり(相続が発生し)所有者の口座が凍結されると管理費や修繕積立金の滞納が始まります。しかし、管理組合に所有者の相続人の連絡先などが登録されていないケースもあり、滞納された管理費等を督促しようにもなかなか連絡が取れないようなことも起こります。
こうした状況が続くと、マンションの管理体制にも影響し、維持するうえで支障も出てきます。
住民それぞれの意識と、管理組合の健全な運営がマンションを健全に維持するための条件と言えるでしょう。
多くのマンションで「管理組合の理事のなり手がいない」「管理組合の総会の出席率が低い」などという問題があります。
多くの住民は「マンションの維持にかかわるノウハウがない」のは当たり前のことです。管理会社との良好な関係を維持しつつ、自主的に運営していこうと考えることが重要です。ノウハウがないからと言って目を背けていては、状況は改善されません。
「マンションは管理を買え」と言われます。
健全に管理されているマンションは資産価値が維持され、将来売却をしようと考えた際にも周辺よりも高く売却できる可能性もあります。それ以上に、住んでいる人が気持ちよく住めるマンションであり続けることができるでしょう。
マンションを購入しようと考える方々は、管理組合の運営状況を確認することも重要です。
(仲介する不動産屋さんに「購入前に長期修繕計画書や管理組合の決算書、修繕積立金の残高状況、議事録などを確認したい」と伝えれば、健全な不動産屋さんならば手配してくれるはずです。(そのマンションの管理組合で議事録などが作られていなければお話しになりませんが…)