今必要な少子化対策は?
岸田総理は少子化対策について「これまでとは次元の違う対策を行う」と話しました。
その一環として「子育て給付金」の拡充を挙げていますが、個人的にはどこかちぐはぐなように感じます。
少子化対策で何が必要なのか
少子化対策として本当に必要なことは何なのかを考える場合、なぜ少子化に歯止めがかからないのかをしっかり押さえておく必要がります。
日本における2022年の新生児数は戦後初めて80万人を切ることが確実と言われています。
コロナ禍による外出規制などから男女が出会う機会が減少したことで、婚姻数が減少し、その結果、生まれる子供の数が減少したのも大きな原因であろうと思います。
しかし、出生数はその前から減少しており、コロナによって出生数の減少が加速したことは明らかですが、それ以上に深刻なのは婚姻数の減少ではないかと考えます。
重要なのは婚姻数の回復
少子化問題というよりは少母化問題であるという指摘があります。
自分もそう思います。
厚生労働省の「令和2年(2020)人口動態統計(確定数)の概況」によると、2020年の婚姻数は約52.5万件。前年(令和元年2019)の約59.9万件より約7.4万件も減少しています。
1970年代前半には100万件を超えていた婚姻件数は1978年に80万件を割り込み、その後も緩やかに減少。2011年には70万件を切り、2020年には前述の通り、52.5万件となっています。
一方で、婚姻している夫婦間での子供の数は減少しているものの微減にとどまっています。
国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、調査が始まった1940年の完結出生児数(夫婦の最終的な平均出生子ども数)は4.27、つまり、一組の夫婦に平均4.27人の子供がいました。その後徐々に減少し、1962年には2.83人、2010年に初めて1.96人と2人を切り、2015年は1.94人となっています。
その内訳をみると、
- 一人っ子が増えた
- 3人以上の子がいる夫婦が減った
という要因があります。
夫婦の出生子ども数分布の推移(結婚持続期間15~19年)(%)
調査年次 | 0人 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人以上 | 完結出生児数 |
1977年 | 3.0 | 11.0 | 57.0 | 23.8 | 5.1 | 2.19人 |
1997年 | 3.7 | 9.8 | 53.6 | 27.9 | 5.0 | 2.21人 |
2015年 | 6.2 | 18.6 | 54.1 | 17.8 | 3.3 | 1.94人 |
(国立社会保障・人口問題研究所のHP上のデータより西山ライフデザイン作成)
確かに減少しているのですが、問題は一組の夫婦から生まれる子を増やすこと以上に減少している婚姻数を回復することだと言えるのではないでしょうか。
では、今何をすべきか
出生後の子供に対する子育て支援金を増額したとしても婚姻は増えないでしょう。子育て支援金は支持率回復のためのバラマキ政策と言われても仕方ないように思います。
少子化対策として、婚姻数を回復するための施策が必要だといえます。
婚姻数が減少している要因としては、結婚適齢期に結婚後の経済的な不安を持つ人が多いことが考えられます。
結婚後の生活は長く続きます。住居費、教育費、老後資金は人生の3大支出と言われます。結婚祝い金を公費で出したとしてもそれで将来の不安を払拭するのは困難です。
また、一時的な対策、時限立法での対応はその制度が無くなる恐れがあれば、安心して結婚し、子供を産むことはできません。
まとまった出生祝い金を、2人目以上の子供にはより手厚く出すなどの施策を半永久的なものとして制度化してはどうかと考えます。
出産・育児を支援する施策も必要
あわせて、生産人口が減少している現在の日本では、女性の社会での活躍や、男性の育児への協力も重要です。
出産・育児は子を持つ親の義務です。しかし、出産・育児のために一時的に仕事を離れた結果、昇給などに影響があるとすれば、出産をためらうことも理解できます。
国会で出産・育児中のリスキリングに助成金を出すなどの議論がありました。まるで「産休・育休で休んでいる間に学びなおせ」と言っているようですが、産休・育休は休暇ではありません。「次世代の日本を支える子供たちを育てる」というとても重要な仕事です。
男女を問わず、育児を経験した人であれば、その大変さはわかると思います。一方で、この成長を見守ることで、親も一緒に成長していきます。
日本社会が出産・育児に対して寛容になるのはもちろんのこと、出産・育児を行う家庭をより手厚く支援する施策が必要です。