住宅地の細分化が気になります
弊社がある雪が谷大塚エリアは環状八号線を渡ると住居表示が「田園調布」になります。
田園調布と言えば、100年近く前に東急電鉄が主導して開発した高級住宅地。
これまでにも数多くの有名人や政治家なども居住されてきました。
分譲され始めた当時はひとつひとつの住宅地の区画が大きく100坪(約330㎡)を超え200坪を超える様な土地もありました。
最近、それらの土地が相続などを原因として売りに出されるケースが少なくありません。
バブルの頃は数億円の値を付ける土地も少なくありませんでしたが、今でも田園調布でこのクラスの土地が売りに出れば億を超えます。
特に田園調布3丁目と4丁目の一部は土地分割に制限がかかっており、165㎡(約50坪)以下に分割することができません。
これらのエリアの物件価格は1坪(約3.3㎡)あたり320万円~400万円程度の価格で取引されています。
このエリアで土地を購入しようと考えた場合、最低でも1億6000万円くらいの価格になります。
(実際にはピッタリ50坪という土地はありませんのでもう少し上乗せが必要です)
結果として購入できる人は限られます。
実際、田園調布3丁目、4丁目には売り出されているものの買い手がついていない物件は少なくありません。
田園調布3、4丁目でなくても周辺には比較的大きな区画の物件が今も残っています。
それらの土地が売りに出される場合、購入者層を広げる手段として、買い手がつきそうなな価格帯に下げるため、分割されるケースが目立ちます。
200坪くらいの土地だと4~6区画くらいに分割され、1区画当たり90~150㎡程度になります。
このエリアでは大通りに面した一部の地域を除いて容積率(敷地面積に対し建築できる建物の床面積の上限)が80~100%に設定されています。
90㎡の土地で容積率100%であれば90㎡の床面積の建物が上限ということになります。
例えば、田園調布2丁目(田園調布駅のロータリーと反対側に広がるエリア)では1億円を切る金額での売り物件も出てきます。
それでも普通のサラリーマンにはなかなか手に届く金額ではありません。
「少し小さくても田園調布に住みたい」という人もいるでしょう。
土地を売却する際、そのままでは金額が大きくなかなか売りにくいため、分割して販売するケースが増えてきます。
ちなみに田園調布2丁目エリアの土地の価格は坪当り250万円~320万円程度のレンジが多くなっています。
弊社の地元である雪が谷大塚や南雪谷、田園調布本町といったエリアでも状況は同じです。
私は雪が谷大塚に40年以上住んでいます。
子供の頃は大きな家があったところが分割されて販売されてきたケースをいくつも見てきました。
空き家のままにしておくわけにはいきませんから、分割してでも販売し、それぞれに住民がいる方が良いとは思います。
しかしその一方で、一度分割された敷地はもう元には戻りません。
何十年か経過した後、区画整理などが行われたりしない限りもう大きな区画に戻ることはないでしょう。
需要と供給の折り合うところ、と考えれば仕方がないことだとは思います。
しかし、今後、人口減少が進み、土地の値段が下がってくるようになった時、「大きめの住宅を交通アクセスの良いエリア」に土地を探す人が増えることもあり得るのではないでしょうか。
あまり土地の細分化があまり進みすぎると、このようなニーズにはこたえられなくなってしまうのではないかと危惧しています。
住宅地の様子も少しずつ変わっていきます。
仕方のないことなのでしょうが、失われていく街の姿に少し寂しい感じがします。
空き家のまま朽ちている住宅が残って周辺に悪い影響を及ぼすよりはよっぽど良いことなのでしょうが。