セミナーを聞いてきました。
5月21日の午後、セミナーを聴講しました。
今後の不動産はどうなるのか?というテーマのセミナーです。
本来、不動産資産を持つ人たち向けに新たな投資を促す提案を行うための集客用セミナーなのだとは思いますが、内容に非常に興味があり、また、自分自身も一人の不動産投資家として参加してきました。
ここで大きな話題になったのが「生産緑地」に関する話。
生産緑地とは
生産緑地法は市街化区域内の宅地化を促す目的で1974年に公布され、農地にも「宅地並み課税」されることとなり、都市部の農地はほとんどが宅地化されることになりました。
その後、生産緑地法は1992年に改正され、自治体が指定した土地については「生産緑地」すなわち保全されるべき緑地と位置付けられることになりました。この期間中は主な営農者が亡くなられ、農業を継ぐ者がいない場合や、健康上の都合等で農業が続けられない場合などのケースではない限り、農地として管理することを義務付けられていました。
生産緑地に指定されると
- 30年間は農地として営農することが義務付けられ、建築行為などの制限を受けます(生産緑地法7条、8条)
- 相続税の納税猶予や固定資産税等の税制上の優遇措置が受けられます。
この法改正から30年が経過する2022年以降、生産緑地の所有者は、自治体に対し当該地の買取を請求することができるようになります。
自治体は、事情がない限り当該地を買い取ることになるのですが、多くの自治体が財政上の都合から買い取りを拒否することが予想され、農地としての引き取り手がいない場合には開発用地としての売却や、農地以外の方法での活用ができるようになります。一方で、農地以外の活用方法を選択した場合には上記のメリットを受けられなくなります。
このようになると、
1.これまでの農地としての課税から宅地並みの固定資産税が課され、固定資産税が200倍になる。
2.納税猶予を受けていた相続税は利子税も含め納付義務が発生する。
こととなります。
一方、相続発生時に相続人が農業を継続することを選択し、後に農業をやめるときには、それまで猶予されていた相続税の納付猶予のメリットを放棄することとなり、その時点で相続税+利子税の納付が必要になります。
今、問題になっているのは、
2022年以降、生産緑地を保有する人たちの多くが買い取り請求を行う
⇒自治体・営農者の引き取り手がいない
⇒開発用地として売却される。不動産活用として多くの賃貸物件が市場に供給される。
⇒不動産価格が下がる。周辺の不動産賃料相場が下がる。
と懸念されていることです。
弊社の地元「大田区」にはほんの少ししか生産緑地はないようですが、城南エリアでも「世田谷区」などには相当な面積の生産緑地が存在し、「杉並区」なども相当な面積の生産緑地があるようです。
生産緑地の周辺には閑静な住宅街として定着しているエリアも多く、そのエリアで賃貸業を行っている大家さんは今後の賃料の下落リスクが、土地保有者の間では不動産価格の下落リスクがあると考えられます。
生産緑地は500㎡以上の土地が指定されているので、相続が発生した時には評価額も大きくなり、そのままだと農業を続ける場合には納税猶予は受けられるものの、廃業するときには多額の相続税がかかることになります。
都心部で農業で生計を立てるのは相当に困難であり、一方で生産緑地の中には住宅用地としてのポテンシャルを持つ土地も多いことから、売却、あるいは不動産賃貸業への転換を図る生産緑地保有者が多いだろうと懸念されているわけです。
今後どうするかという検討は相続が発生してからでは検討期間が短いため、2022年を前に今、秘かに(といっても生産緑地保有者の間ではすでに喫緊の課題として)話題になっています。
活用方針の検討のほか、相続対策の方法もあります。
近くに該当する方がいらっしゃればお声がけください。力になれます。