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雑感 2017.04.26

今日の日経新聞一面に分譲マンションの建て替えを促進するために容積率を緩和する方針を打ち出したとの記事が掲載されています。

現在、都内では1万棟もの旧耐震基準で建てられたの分譲マンションがあるということですが、実際に建て替えまで至ったケースは非常に少ないのが現状です。

旧耐震基準とは

日本の建築基準法では、建物を建築する際の建物の構造計画において一定以上の耐震性を確保できるような基準を設けています。
この基準はこれまでの何度かの大きな地震を経て改正が行われてきました。
特に1981年5月から適用された基準によって建てられたものを新耐震、それ以前の設計によって建てられたものを旧耐震と呼びます。

この改正の前後で建物の耐震性には大きく差があると言われています。
実際に阪神大震災や東日本大震災などを経ても新耐震と旧耐震では建物が受ける損傷の度合いが大きく異なることがわかっています。新耐震の建物では地震の揺れによる建物の倒壊(倒れてしまう)はほとんどありません。

実際に不動産業界の物件取引においても「旧耐震」か「新耐震」かは重要なチェックポイントです。

REITなどが仕入れる物件も「新耐震」であることが最低限の条件となっています。

 

記事にあるような容積緩和は、先行して市・区のまちづくり計画が策定され、対象地区などその方針の乗っ取った形での適用が原則です。

これにより、新築した時に新たに床面積が確保できます。
それを売却した価格が建て替え費用の一部に充てられることから現居住者の資金負担面でメリットが出ます。

一定の効果は得られると思いますが、実際にはそれでも様々なハードルがあると思います。

 

今日の日経新聞の「きょうのことば」にもある通り、国土交通省の推計では、2015年時点で築30年超の分譲マンションは全国で計約151万戸もあるそうです。
10年後には約2倍(約半数)、20年後には3倍強の485万戸(約6割)まで膨らむと試算されています。

 

しかも、最近のマンションは大型のものが増えました。中には1棟で1000戸を超えるものもあります。

マンションの建て替え決議には住民の議決権の4/5以上が賛成する必要があります。

仮に、新築時に40歳で購入した人が40年住み続け、80歳を過ぎる頃に建て替えの話題が管理組合の中で話題になったらどう感じるでしょうか。

マンションに住む人たちの中には、入居者が変わっている住戸もあるでしょう。しかし、永くそのマンションに住み続けている人もいるはずです。

そのような人が「自分はこのマンションを終(つい)の棲家と決めた」と考えていたら建て替えは難航しそうです。

仮にそのような人は少数派で、4/5の賛成が確保できたとしても、その人を無理やり追い出すことはできません。
次の住むところを手配し、穏便にご退去いただかなければいけなくなります。
80歳を過ぎ、建て替え決議に反対し、でも賛成が4/5を超えたからといって出て行っていただくのも仕方ないのですが一筋縄にはいきそうにありません。

そうでなくても、様々な境遇の人が同居するマンションの意思決定には多くの課題を抱えることになるでしょう。

世の中にはたくさんのマンションができています。
23区内に住んでいれば毎週金曜日には新聞の折り込みで新築マンションの広告が入っているでしょう。
今も次々に新築マンションが建てられています。

 

日本は人口減少社会に入っています。これからは人口が減るにつれ、不動産価格も多くのところで下落するという予測もあります。
良い立地に立っているマンションでは、需要もあるのでこの施策は一定の効果を上げると思います。
一方でエリアによってはより二極化が進行し資産価値が下落するところもありそうです。

 

マンション選びも「長期にわたる資産価値が維持できるか」という観点で考えることの重要性がますます増していくものと考えます。

 

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